ウールセーター 縮みのメカニズム

クリーニング店を経営していて相談品も多いセーターの縮み。ご家庭でウール素材のセーターをお洗濯して、縮んでしまったり型崩れを起こしてしまったという方が非常に多くいらっしゃると思います。なぜ?どうして縮むのかメカニズムを記事にしてみます。

ウールの繊維構造

ウールの繊維は人間の髪の毛と同じくうろこ状になっています。髪の毛ではキューティクルといわれます。

イラスト↑の左側は乾燥しているときの状態で、右側は湿度や水分などを吸ってうろこが開いている状態。なぜ水分でうろこが開くのかというと人間の髪の毛もそうですが一定量の水分を取り込み潤った状態を維持しようとする性質からなんです。保湿のため自然に備わっているもので本来なら素晴らしい特質なんですが、お洗濯から鑑みるとちょっとやっかいなものになります。当然家庭洗濯で水洗いをする場合は水の中に浸してしまうので、うろこが開いた状態になります。ではそれがどのようにセーターの縮みとなって表面化してしまうのかを解説します。

方向性摩擦特性

話は変わりますが、小さいころ一度は道端で見かけて遊んだ経験もあると思いますが、通称ねこじゃらしと呼ばれる雑草。

こうやって遊んだ経験はないでしょうか?

つぶさない程度に握る力を強めたり弱めたりすると、ねこじゃらしは手から飛び出します。方向性摩擦効果といって摩擦で一方向へ進む効果のことをいいます。

話をウールの繊維に戻します。ウールの繊維が水に浸された状態で摩擦が加わると

←方向へ進みます。

逆方向→へはうろこの突起が邪魔をして進むことはできません。この方向性摩擦の特性が働くのは水に浸した状態からセーターを揉んだり洗濯機の水の回転などによって働いてしまいます。

もうお解りだと思いますが、ウール繊維の水分によってうろこが開く特性と方向性摩擦の特性が合わさり、セーターの縦糸横糸が複雑に絡み合いの縮みとなって表面化してしまいます。

またウールセーターが縮むと繊維が寄り集まり硬化、硬くなってしまいます。これをフェルト化といいます。

セーターの脇下がフェルト化、縮んで硬くなるのは汗による水分の影響と摩擦で起こります。ご家庭でセーターをお洗濯される場合はこういったリスクをよく知った上で、極力水に浸したセーターは動かさずに、水に潜らすぐらいのイメージで洗うとよいでしょう。でもクリーニング師としてセーターの水洗いはおすすめしません。こちらの記事も参考にして下さい。